1ヶ月で痩せられる最大幅は体重の5%
「1ヶ月で10キロ落とせますか?」
これは、パーソナルトレーナーをしていると定期的に飛んでくる質問です。
言いたい気持ちはわかります。
人生のどこかで誰しも「人間、明日から別人になれないか?」という幻想を抱く時期がある。
だけど身体はそんな“瞬間芸”に付き合ってくれません。
結論から言うと──
1ヶ月で落としていい体重の最大幅は現在体重の5%まで。
たとえば体重60kgの人なら、
1ヶ月で落としていいのは 3kgが上限 です。
「少なっ」
と思いました? わかる。しかしこれにはちゃんと理由があります。
ここからそのロジックを、できるだけ専門的に、かつ身近なたとえも入れながら話していきます。
■なぜ5%ルールが存在するのか?
① 体は急な変化が大嫌いだから
人間の体はとても保守的です。
いまの状態がベストだと勝手に思い込んで、そこから急に変わると全力で抵抗してきます。
極端なカロリー制限をすると、体が勘違いします。
「あれ?食料危機?これは省エネモードに入らなアカン」
これが代謝低下。
つまり、無駄に燃費の良い体=痩せにくい体が完成します。
適正とされる5%は、この「省エネモードスイッチ」が入らないギリギリのライン。
② 脂肪はそんなに高速で燃えない
脂肪1kgを燃やすには約7200kcal必要です。
(世間では7000kcalと言われますが実際は7200前後)
つまり1ヶ月で3kg痩せるには、
7200 × 3 = 21600 kcal の赤字が必要。
これは
1日あたり720kcal分の赤字。
食事で400〜500kcal調整、
運動で200〜300kcal使う、
これなら現実的です。
でも10kg落とそうと思うと
1日2400kcalの赤字。
ほぼ絶食+長時間運動。
無理です。体が壊れます。
③ 筋肉が落ちない限界が5%
体重が急激に落ちると、一番最初に削られるのは脂肪ではなく筋肉。
筋肉が減ると
-
基礎代謝が落ちる
-
疲れやすくなる
-
リバウンドしやすくなる
という、ダイエットの三重苦に突入します。
5%以内の減量は、科学的にみて
筋肉を守りながら脂肪中心に落とせる限界ライン。
だからプロのトレーナーはこのラインを必ず守ります。
■例えるなら──
身体は「ちょっと古いOSのパソコン」みたいなものです。
急にアップデートをかけると
-
作業が止まる
-
フリーズする
-
そもそもアップデート拒否
みたいな現象が起きる。
だからアップデート(痩せる)は少しずつ。
5%は身体が不調を起こさず、静かにアップデートを受け入れてくれる最大幅。
■5%以上痩せると何が起きるか?
-
むくみやすくなる
-
疲れが抜けない
-
眠気・集中力低下
-
イライラ
-
生理が止まる
-
代謝が下降
-
筋肉激減
-
食欲暴走(脳の正常反応)
そしてお決まりの結末:
リバウンドで倍返し
「一瞬痩せて、数ヶ月後に太った」
これはシステム上、当然の結果なのです。
■5%以内のメリット
逆に5%以内で落とすと…
-
筋肉が残る
-
代謝が維持される
-
食欲の暴走が起きない
-
ホルモンバランスが安定
-
体調を崩さず続けられる
-
リバウンドしにくい
-
見た目が綺麗に変わる
いわゆる 健康的に痩せる というのは、ここに尽きます。
■じゃあ実際どうやって落とせばいいか?
① 食事は“減らすより“整える
-
タンパク質 体重×1.2〜1.6g
-
脂質は最低50〜60g
-
炭水化物を体力に合わせて調整
「食べない」より「配分する」。
② 週2〜3の筋トレ
筋肉を残す=代謝を守ること。
筋トレは痩せやすい体質を作る唯一の行為。
③ 睡眠7時間以上
睡眠不足は食欲を増やすホルモンが跳ね上がります。
ダイエットの9割は睡眠で決まります。
④ 歩く
実は一番脂肪が落ちる。
1日8000〜10000歩が黄金ライン。
■まとめ:1ヶ月の上限は“今の体重の5%”
これは甘いラインではなく、
身体が壊れず・筋肉を守り・リバウンドのリスクを最小限にした現実的で科学的なライン。
つまり
-
60kg → 3kgまで
-
70kg → 3.5kgまで
-
80kg → 4kgまで
これが「ちゃんと痩せた」と胸を張っていい量。
焦って急カーブを切るほど、車(身体)は壊れます。
ダイエットは短距離走じゃなくて、長距離ドライブ。
今日からは
5%以内で淡々と落とす
これだけ覚えておけばOKです。
