ビッグ3だけが正解じゃない。
― 筋トレの王道に隠れた“自分に合うアプローチ”とは ―
筋トレを始めた人なら、誰もが一度は聞く言葉。
「まずはビッグ3をやれ。」
ビッグ3――スクワット・デッドリフト・ベンチプレス。
この3つは、全身の筋肉を効率よく使い、筋肥大にも姿勢改善にも効果的。
事実、ボディメイク・アスリート・リハビリ、どの分野でもベースとなる最強の基本です。
でも、だからといって「全員にビッグ3が最適」とは限りません。
1.ビッグ3の良さを正しく理解する
まず、ビッグ3が優れている理由を整理してみましょう。
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全身を連動させる複合運動
→ 体幹・下肢・上肢の連携を高め、姿勢や動作効率を改善。 -
高重量を扱える
→ 筋肉への刺激が大きく、成長ホルモンの分泌も促す。 -
基礎体力・代謝アップ
→ 消費エネルギーが多く、ダイエットや健康維持にも効果的。
いわば、身体づくりの基礎体力テストのような存在です。
筋トレ初心者でも正しく身につければ、全身の土台が整う。
だからトレーナーがまずビッグ3を勧めるのは理にかなっています。
2.でも、「ビッグ3が合わない人」もいる
どんなに優れたトレーニングでも、体の構造や目的によっては不向きな場合があります。
たとえば——
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股関節や胸椎の可動域が狭く、フォームが崩れやすい人
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肩や腰に既往歴がある人
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姿勢バランスが崩れていて、代償動作が強く出る人
こうした場合、ビッグ3を無理に続けると、
「狙った部位に効かない」「痛みが出る」「フォームが安定しない」などの問題が起こりやすい。
ビッグ3は正しくできれば万能ですが、
合わない状態でやると危険でもあるんです。
3.ビッグ3以外にも、アプローチはある
筋肉を育てる目的が「体を変えること」なら、
やり方はビッグ3だけではありません。
たとえば、
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部位別トレーニングででフォームを安定させる
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マシン種目で可動域をコントロールしながら筋肉を意識する
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自重トレーニングで正しい動作パターンを学ぶ
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ファンクショナルトレーニングで俗にいう使える筋肉を育てる
こうしたアプローチを経てからビッグ3に戻ると、
フォームも安定し、効かせ方も格段に上達します。
基礎とは、いきなり重いものを持つことではなく、
自分の体を正しく扱う力を育てること。
トレーニング歴の長い人ほど、この順番を大切にしています。
4.「ビッグ3をやるか」より、「何のためにやるか」
ビッグ3は目的によって役割が変わります。
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筋肥大目的 → 高重量・低回数で刺激を狙う
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健康・姿勢改善目的 → 軽重量でフォーム重視
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パフォーマンス向上目的 → 動作の連動性・安定性を意識
つまり、「ビッグ3が良い・悪い」ではなく、
“どんな目的で取り入れるか”が大事。
たとえばダイエット中の女性なら、
フルスクワットよりもブルガリアンスクワットの方が
お尻や太ももを狙いやすいこともある。
男性でも、フォームが崩れるほどの重量を扱うより、
コントロールできる重さで“質”を高める方が効果的なこともある。
自分の目的に合わせてメニューを選び、
ビッグ3を軸ではなく選択肢のひとつにできる人。
それが、結果を出し続ける人です。
5.トレーニングは「競争」ではなく「探求」
SNSでは「何キロ上げた」「どれだけ重いか」が注目されがちですが、
本来トレーニングは“自分の体を知る時間”です。
今日の調子、可動域、フォームの感覚。
一つひとつを確かめながら、自分に合った刺激を見つけていく。
そのプロセスの中で、ビッグ3が最適な時期もあれば、
一歩引いて基礎動作を整える時期もある。
変化を恐れず、自分に合うやり方を選び直せる人が、
長く、強く、しなやかに続けていけるのだと思います。
6.まとめ
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ビッグ3は、全身を効率よく鍛える最強の基本
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ただし「今の自分」に合うかどうかを見極めることが大切
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マシン・自重・補助種目などの別ルートも正解
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トレーニングは競争ではなく、自分を探求する行為
重さよりも、自分との対話を大切に。
ビッグ3を使いこなすのではなく、
ビッグ3を通して“自分を理解する”。
その意識が、強くしなやかな身体をつくります。
